夢の欠片
そんな経緯があって、今日は改めて大沢家に招かれたというわけだった。


掃除も洗濯もすばやく終わらせて、お気に入りのマキシ丈のワンピースに着替えると、急いで家を出る。


12時頃においでと言われていたのにもかかわらず、もうすでに11時を回っていた。


手土産でも持っていこうと思っていたのに、これじゃ間に合わない。


仕方なく手土産は諦めて、駅まで小走りで向かうと、汗が額や背中から流れ出てきた。


せっかくお気に入りのワンピースを来てきたのに、もうすでに汗でぐっしょりになってしまっている。


少しだけブルーになりながら駅につくと、一駅分の切符を買ってホームに向かった。


電車がくるまで待つ間、今日健と何を話そうか考える。


だいたいのことは、中田の父に聞いていたけれど、健の口から改めて真実を聞きたいと思っていた。


奥さんも当事者なわけだから、たぶん母にいい印象は持っていないだろう。


私だって知らなかったとはいえ、健を奥さんから奪ってしまった女の娘だ。


本当なら疎ましく思われていても仕方ない。


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