夢の欠片
「ひなちゃん!いらっしゃい!どうぞ入って?」
玄関のチャイムを押すと、待っていましたとばかりに健の奥さんが出迎えてくれた。
「こんにちは……
あの……おじゃまします……」
私はまだ遠慮がちに奥さんに挨拶をする。
そんな私を見てにっこりと笑いながら、奥さんはリビングへと私を促した。
「おぉ、ひな!待ってたぞ!ほら、こっち座って?」
リビングのドアを開けると同時に、健がそう言って嬉しそうに私を手招きする。
中田の父や愛未さんもそうだったけれど、健と奥さんも、まるで本当の娘のように歓迎してくれる。
私はそれが嬉しい反面、自分が置かれている環境を思い出して複雑な気持ちになった。
中田の父も健も今は素敵な奥さんと共に、幸せな家庭を築いてる。
それなのに自分の家庭といったら、男に依存する母親と、娘の体をいやらしい目付きで見るような父親候補がいるだけだ。
とてもじゃないけど幸せとは言えない。
もしかしたらそう思っているのは私だけかもしれないけれど……