夢の欠片
「今日はひなとゆっくり話したかったから、あいつらは実家のおばあちゃんちに行ってるんだ

健太はともかく、花純美がいたら落ち着いて話せないからな?」


ハハハッと笑いながらそう健は言ったけど、きっと子供たちに聞かせたくない話になることを予測してのことだと思った。

「出来たわよぉ」


ちょうど食事の準備が出来たらしい。


奥さんの声に導かれるように、健と私はダイニングテーブルの席に座った。


テーブルには色とりどりの野菜やお肉がきれいに並べられた冷やし中華が置かれている。


「わぁ~!美味しそう!」


思わずそう言ってしまうと、奥さんは嬉しそうに笑った。


食べてみると、見た目と同様に美味しくて、私はあっという間に平らげてしまう。


夏はやっぱりさっぱりしたものが食べやすい。


「気に入ってもらえたみたいで良かった」


奥さんはそう言いながら、食べ終わった皿を下げ始めた。


私も手伝おうと、自分の皿をキッチンまで運んで彼女に手渡した。


「ありがとう

ひなちゃんはちゃんとお手伝いもできるのね?

えらいわ」


そう言われて初めて、私は家では何も手伝っていなかったことに気づく。


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