夢の欠片
鞄から鍵を出して玄関のドアを開ける。
まだ早い時間に学校から帰ってきてしまったせいか、アパートの周りも閑散としていた。
「ただいま……」
誰もいない部屋に向かって、習慣のようにそう小さく呟く。
もちろん返ってくる言葉もなく、私は玄関を入ってすぐ右側にある自分の部屋に真っ直ぐ向かった。
部屋に入ってその辺に鞄を投げ出すと、制服を脱いで私服に着替える。
それからベッドの上にドサッと横たわり目を閉じると、さっきの担任の言葉が甦ってきた。
あなたの気持ちはよくわかる……
簡単にそんな言葉を口にする、あの女教師に吐き気がする。
お母さんも心配してると思うわよ?
そんなわけない。
あの人はいつも自分が誰かに心配されたいんだから……
自分以外の人を心配するなんてあり得ない。
例えそれが、自分の娘であっても……
母親がみんな娘を心配すると思うなっつーの!
あの担任は何にもわかってない。
まだ校長のおっさんのが、余計なこと言わないで、事実だけを淡々と話していたと思う。