夢の欠片
だけど私の思惑とは違って、健はまだ自分を責めてるようだった。


健を苦しめるために会いに来たんじゃないのに……と悲しくなる。


するとそこに助け船を出すように、さとみさんが口を開いた。


「ひなちゃんは中学生なんだよね?

夏休みを利用してこの人を探しに来てくれたんだ?」


唐突にそう言われて、一瞬反応できなかったものの、話題をすり替えてくれたらしいさとみさんに乗っかってにこりと笑って答えた。


「そうなんです!

前から会いたいと思ってたんですけど、もう中学二年になって一人でどこにでも行けるようになったし、いい機会かなって思って」


それを聞いて、今度は健が先程の悲しそうな表情から、にこやかな顔に戻って言った。


「よくここがわかったな?

ひなは小さかったから場所とか覚えてなかったんだろ?

お母さんに聞いたのか?」


そう言われて私は咄嗟に嘘がつけなくて、つい正直に答えてしまう。


「ううん、お母さんじゃなくてお父さんに聞いて……」


そこまで言うと、健の表情が急に曇った。


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