夢の欠片
「お父さんて……

もしかして中田さんのこと?復縁したの?」


やばい……


中田の父の話はするつもりなんかなかったのに……


つい、油断して正直に答えてしまった。


後悔したものの、一度口に出してしまった言葉はもう元には戻らない。


「えっと……

健と別れてからしばらくして復縁したんだけど、三年暮らして結局また離婚したんだ……」


仕方なくそう答えると、健は小さなため息をついて、それからまた私に問いかけた。


「そうだったのか……

でも……てことは、別れてからもひなはお父さんとはたまに会ったりしてるんだね?」


そういうことにしてしまおうかとも思ったけれど、やっぱり健にいろんな話を聞くにあたって、自分が嘘をついちゃいけないような気がした。


「実は……それからずっと会ってなかったんだ……

それで健に会いに来る前に、お父さんを訪ねたの……

そこで健のこと教えてもらって、ここの場所も知ることが出来たんだ……」


健はようやく納得したように頷くと、中田の父について詳しく私に聞いてくる。


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