夢の欠片
それが中田の父から復縁を迫られているという相談だとすぐにわかった。


案の定、健はそのことを私に伝えてくる。


「中田さんから復縁を迫られているって話だった

それで俺に恋人のふりをしてくれって頼まれて……

一度は断ったんだけど、このままだとひなにも危害が及ぶかもしれないって言われて仕方なく……引き受けたんだ」


それは母の嘘だと私は思った。


あの中田の父が子供に危害を加えようとするはずがない。


たぶん、健に引き受けさせるために、私を引き合いにだしたんだろう……


母ならやりかねない。


「それから中田さんと話し合うまでの2ヶ月間、俺たちはひなと三人で日曜の度に、いろんな場所に行くようになった

あやが言うにはひなと仲良くなってもらって、恋人同士だということに信憑性を持たせたかったらしい」


ここまでは中田の父が話してくれていたことと一致していた。


どうみても母の策略としか思えない。


母と会ってしまったことで、健の人生を狂わせてしまったことを申し訳なく思う。


だけど健が悲しむのがわかったから、私はもう謝らなかった。


< 200 / 289 >

この作品をシェア

pagetop