夢の欠片
もし次に会った時――


私が色っぽいパンツを履いて、もっと色気のある女性になってたら……


可能性はゼロじゃないってことなのかな?


そう思うと嬉しくなって、顔が緩んでしまう。


翔吾はそんな私を見てクスッと笑いながら、頭を優しくポンポンと叩いた。


それからもたくさん飲んで食べて満足した頃、タイミングよく翔吾が「そろそろ行くか?」と私を促す。


もうすぐそこまで別れの時間が近づいてるんだと思うと、無性に寂しくなった。


だけど翔吾を困らせないように、笑顔でごちそうさまを言うと、店のドアを開ける。


夏の湿った空気が一気に体を不快にさせた。


べとつく腕を翔吾に絡ませると、嫌がるかと思ったのに黙ってそれを受け入れてくれる。


最後の夜だから特別なのかな?


そんなことを思いながら、街灯の少ない道を二人で歩く。


翔吾の腕は一生懸命働いてる人の腕だった。


太くて力強くて安心する。


< 214 / 289 >

この作品をシェア

pagetop