夢の欠片
ふと周りを見渡すと、いつもの道に向かっていないことに気付いた。


そっか……


もう翔吾の家に帰るんじゃなかったんだな……


また少し寂しくなって、翔吾を見上げると「ん?」という顔で私を見る。


私はなんでもないというように首を振ると、暑苦しいくらい翔吾にくっついた。


夏休みに入る前にはいつも歩いていた自宅への道のり。


そこを翔吾と一緒に並んで歩くなんてなんだか不思議な気分になる。


もう少しで着くという距離になったとき、私はピタッと足を止めた。


「もうここでいいから」


家の前までなんて申し訳ない気がして、そう言った。


あとは一人でもちゃんと帰れる。


「ダーメ、女の子がこんな時間に一人で歩いたら危ないだろ?」


そこは絶対譲らなくて、仕方なく私はアパートの前まで送ってもらった。


「ありがとね?

最初から最後まで、翔吾にはお世話になりっぱなしだったね?

私……翔吾に会えて良かった

翔吾のおかげでお父さん達にも会えたし……

いろんなこと教わった気がする

この夏休みのことは絶対忘れないから……

ほんとにありがとう」


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