夢の欠片
泣きそうになるのを堪えながら、私は精一杯……翔吾に感謝の気持ちを伝えた。


翔吾は私の言葉には特に何か言うわけでもなく、照れたように笑いながら聞いていた。


それからゆっくり私の目線に合わせるようにしゃがむと、今度は翔吾が私に最後の言葉をくれる。


「明日からまた家や学校で大変だろうけど、ひなが出来ることを一生懸命やれば、必ず周りは認めてくれるから……

頑張れよ?」


そう言った翔吾の目は、中田の父や健と同じ……娘を見るような目だった。


本気で私を心配してくれているのがわかる。


私はにっこり笑うと、夏休みの間に自分の中で決めたことを翔吾に伝えた。


「私……この夏休みの間にお父さん達に会えて、いろんな話が聞けて本当に良かったと思ってる

それもみんな翔吾が私を家に置いてくれたから出来たことだし、ほんとに感謝してるんだ……

翔吾からもいろんなこと教わったし、どうでもいいって思ってた学校も頑張って行こうって思えた……

勉強だってね?これから必死に頑張ってみる

それで頑張って高校に行って、翔吾や美樹ちゃんが出来なかったこと……

たくさん経験しようと思う……

だからね?翔吾……」


そこまで言って私は急に涙が止まらなくなった。


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