夢の欠片
これから自分が伝えようとしてることは、ずっと考えて考えて出した答えだ。


だけど……いざ翔吾に話そうとすると、決心していた答えが揺らぎそうになる。


翔吾は黙ってじっと聞いていた。


私が話そうとしていることを全てわかっているかのように……


私は涙を手の甲で拭うと、きちんと伝えようとしっかり翔吾の目を見つめた。


「翔吾には高校に受かるまでもう会わない……」


私がようやくその一言を伝えることが出来た時、翔吾は納得したように微笑んだ。


「わかった

俺もひなが高校に行けるように遠くから祈ってるから

女子高生になったら会いに来いよ?」


そう言って指で私の涙をそっと拭ってくれる。


私はグチャグチャになった顔をさらに歪ませて、翔吾の胸に抱きついた。


翔吾はいつものように優しく髪を撫でながら、いつもよりも少しだけ力強く抱き締めてくれる。


私は翔吾の気持ちが嬉しくて、泣きながら何度も頷いた。


翔吾がびっくりするくらい可愛くて色っぽい女子高生になって会いに来よう……


新たな目標を決めて、しばらく会えない翔吾の温もりや匂いを忘れないようにいつまでもずっと抱きついていた。



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