夢の欠片



ぼんやり窓から空を見上げると、入道雲がいっぱいに広がっていた。


雨……降るのかな?


そんなことを考えながら、空から校庭に視線を移した。


うるさいくらいの蝉の声の中に混じって、部活をやってる生徒の声が聞こえてくる。


暑そうだなぁ……


窓際の席で頬杖をついて、陸上部が走る姿を目で追いながら、そう思った。


汗だくで一生懸命なところは、翔吾が仕事をしている姿によく似ている。


翔吾と過ごした夏の事が夢だったかのように、そろそろと時は流れ、また新たな夏を迎えようとしていた。


翔吾……元気かな?


家まで送ってくれたあの日から……


宣言通り、翔吾には会っていない。


あれから必死に夏休みの宿題を二日間で仕上げ、二学期になるとそれをドサッと提出して、先生や周りの生徒を驚かせた。


校長先生にも会いに行き、きちんと登校したことと、夏休みにいろんな経験が出来たことを、細かく報告した。


校長先生は私がちゃんと登校したことを、目を細めながら誉めてくれたし、翔吾のとはまた違った優しい大きな手で私の頭を撫でてもくれた。


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