夢の欠片
ひんやりとした感触が手首から伝わってくる。


少しだけ力を入れてスッと引いてみると、プツッと音が聞こえたような気がした。


一筋入った一本線から、鮮やかな赤色が丸くなって浮かび上がる。


ビーズみたいだな……とぼんやり思ったのも束の間、その丸い粒はあっという間に形を崩して、私の手首から滴り落ちた。


それを見て急に我に返る。


私、なにしてんだろう?


急いで手首をティッシュで押さえると、血が止まるのを待った。


思ったよりも傷は浅かったようで、すぐに血は止まる。


救急箱から絆創膏を出して、左の手首にピタッと貼った。


ホッと一息つくと、一気に疲れが襲う。


もう何もかも忘れて寝てしまおう。


ダルい体をなんとか立ち上がらせて、ベッドに向かった。


ドサッと体をベッドに預けると、睡魔が一気に押し寄せてくる。


私はそのまま深い眠りについた。


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