夢の欠片
「ひなぁ、帰るよ?」
そう気軽に声をかけてくるのはクラスメイトの萌ちゃんだ。
彼女は高校に入学して初めて私に声をかけてくれた女の子だった。
スラッとしたスレンダーな体に、ショートカットのよく似合う美人で、さばさばした性格が、私にはとても心地いい。
すぐに意気投合して仲良くなった。
中学時代、友達が一人もいなかった私にとって、萌ちゃんは久しぶりに出来た友達で、なんだか不思議な気分になる。
彼女は私を引き連れて、カラオケに行ったり、プリクラを撮ったり、今までしたことのない未知の世界にどんどん引き込んでいった。
翔吾が言ってた普通の女子高生ってこういうことなのかなと思う。
「ねぇねぇ、帰りにちょっと付き合って?」
「どこ行くの?」
いつもはどこに行くのかはっきり言う萌ちゃんが、何も言わないのは珍しい。
「ちょっと気になる人がいるんだよねぇ
ひなにも見てもらいたくて」
そう言って恥ずかしそうに笑う萌ちゃんが、誰かに恋をしているんだということは私にもすぐにわかった。