夢の欠片
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さっきはごめんね?
ひなには嫌な思いさせちゃったね?

私は大丈夫だから、ひなは気にしないで彼と仲良くしてね?

二年ぶりなんだよね?

せっかくの再会を邪魔しちゃってごめん……

明日になればきっと笑っておはようって言えるから、今日だけは許してね?

誘っておいて置き去りにしちゃってごめんなさい

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私は胸をギュウッと締め付けられたように苦しくなる。


萌ちゃんは自分だって傷付いたはずなのに、私のことを気遣ってくれていた。


私はいくら萌ちゃんでも、翔吾を譲る気持ちにはなれなかったのに……


ようやく翔吾のアパートについた頃には、もう6時をすぎていた。


懐かしいこのボロアパートに再び来ることが出来るなんて……


ガチャっと鍵を開けて部屋に入ると、翔吾の匂いに包まれる。


二年前と全然変わらない空間に、一緒に暮らしたあの時のことが、一瞬にして頭の中に甦った。


翔吾が貸してくれた一組しかない布団……


一緒にご飯を食べたテーブル……


いつも翔吾が寄りかかってビールを飲んでいた窓の縁……


何もかもが懐かしい。


ふと畳に触れてみると何だかザラザラしていた。

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