夢の欠片
きっと私が掃除したあの時から、掃除なんかしていないんだろう。


私が初めてここに来た時も、こんな風にザラザラしてたっけ……


思わずフフッと笑ってしまう。


ついでだから、翔吾が帰るまで掃除することにした。


あの夏の終わりに感謝の気持ちをこめて、一つ一つ丁寧に拭いたのを思い出す。


小さな部屋はあっという間に拭き終わり、それでもまだ翔吾は帰ってこない。


ふぅ~と一息ついて畳に座ると、もうさっきのようなザラザラした感触はなかった。


――――――…
――――…
――…


ガチャっとドアが開く音で目が覚めた。


どうやら眠っちゃってたみたいだ。


「ごめんごめん、すぐ終わると思ったんだけど、ちょっとトラブルがあってさ

悪かったな?待っててもらって

あれ?もしかして寝てた?」


目を擦りながらトロンとした表情で見ていると、翔吾が焦ったようにそう言った。


「う……ん、ちょっと寝ちゃったみたい」


「そっか……結構待たせちゃったもんな?

もう7時だけど、どうする?

メシはまた今度にするか?」


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