夢の欠片
「えぇっ!もうお腹ペコペコだよぉ

お母さんには電話しとくから、食べにいこう?」


翔吾はそんな私の頭を昔みたいにワシワシ撫でてニカッと笑う。


「お前、そういうとこは全然変わんねぇな?」


「なにそれ?ひどいなぁ

私だってちょっとは変わったでしょ?」


胸を張って威張るようにそう言うと、翔吾はさっきとは違う色っぽい目つきで私を見る。


「そうだな……

ずいぶん大人っぽくなったし、可愛くなった……」


そう言いながら、手の甲で私の頬をそっと撫でる。


それから翔吾の手はゆっくり移動して私の唇をそっとなぞるように触れた。


私はビクッとしながらも、そのまま動けなくなる。


またいつものようにデコピンでもされるんじゃないかって思えて、私はギュッと目をつぶった。


だけどデコピンはいつまでたってもやってこなくて、変わりに柔らかい感触がチュッという音とともにやってきた。


「――ひゃっ!」


変な声をあげながら、慌てて目を開けて後ずさる。


そんな私を見ながら翔吾は声あげて笑った。


やっぱりまたからかわれた……


過剰に反応した自分が恥ずかしくなる。


「そういう反応も、昔と変わんねぇな?」


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