夢の欠片
翔吾が連れていってくれたのは、最後の日に行ったあの焼肉屋さんだった。


とりあえずビールとジュースで乾杯する。


制服に匂いがつくかもしれないと少し気になったけれど、それよりも何よりも二年ぶりに翔吾と過ごす時間の方が大事だった。


「高校生活はどうだ?

楽しい?」


ふいに翔吾がそう聞いてくる。


「うん!楽しいよ?

中学の時より数倍楽しい!」


「そうか、良かったな?

俺や美樹の分まで楽しめよ?」


「わかってる……

そのために頑張ったんだもん……」


そう……


美樹ちゃんの分までいろんな経験しなくちゃ……


私が楽しめば美樹ちゃんも楽しんでる気がしてくる。


「そういえばさっき現場の近くで一緒にいた子、友達?

なんか急に駆け出して家ん中に入ってったけど、けんかでもしたのか?」


そう言われて私は萌ちゃんのことをすっかり忘れていたことに気づいた。

自分が傷つきながらも、私を気遣ってくれていた萌ちゃんを忘れるなんて……


いくら翔吾に会って浮かれてたからって、酷すぎる。


私は自分を責めながら、翔吾の顔を見れなくて俯いてしまった。


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