夢の欠片
「おはよぉ」


声の方に目をやると、明るくそう言いながら教室に入ってきたのは、萌ちゃんだった。


クラスのみんなに手を振りながら、いつものように笑顔で挨拶をしている。


いつもと変わらない萌ちゃんの様子に、私は逆に怖くなった。


このまま、私のことは無視して、まるでいないもののように扱われるんじゃないか……


そんな気がして自分の机の木目を凝視しながら、萌ちゃんがこちらに来るのを待つ。


一度、あんなに楽しい時間を過ごしてしまっただけに、また中学の頃みたいに一人きりなるのは怖かった。


そのくらい中学校生活が、トラウマになっていたんだということに、たった今気付く。


目を瞑り、手を握りしめてじっと机に座っていると、萌ちゃんのものらしき足音が、だんだんこちらに近づいてくるのがわかった。


萌ちゃんの席は私の前の前だから、こちらに来るのは別に私に声をかけるわけじゃないのかもしれない。


コツコツと響いていた足音が、私の席の横でピタッと止まった。


コクン……


私は思わず息を呑む。


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