夢の欠片
これからまた暑い夏がやってくる。


翔吾に会ったのも、中田の父や健に再会したのも夏だった。


いろんな思い出が夏に詰まってる気がする。


翔吾のアパートに近づいた時、私は大きく深呼吸した。


いろんな意味での覚悟をしながら、階段を昇って翔吾の部屋の前に着くと、トントンとノックをする。


時間通りのはずなのに、誰も出てくる気配がしない。


不思議に思ってドアノブを回してみた。


カチャっと何の抵抗もなくドアが開く。


「翔吾ぉ……?」


恐る恐る小さな声で呼んでみる。


中を覗くと蒸し暑い部屋で、スウスウと寝息を立てている翔吾を見つけた。


もうシャワーは浴びたようで、私服に着替えてはいるらしい。



無防備に寝ている翔吾を見て、私の顔は自然と緩む。


翔吾の傍にしゃがんで寝顔を見ていると、好きと思う気持ちが溢れてくるのがわかった。


それはいつもなら考えられない衝動。


あろうことか、私は寝ている翔吾に顔を近づけて、気づいたらそっと唇に触れてた。


柔らかい感触がして、心地いい。


そっと唇を離すと、急に自分のしたことが恥ずかしくなった。


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