夢の欠片
何してんだろう……私……


パッと立ち上がってケーキを冷蔵庫に入れる。


それから翔吾の方を何気なく振り返ると、有り得ないことに、彼は起き上がって私を見ていた。


――えっ!?


まさか……


さっきの気付いてるんじゃ……


顔を強張らせて固まっていると、翔吾が眠そうな声でゆっくりと口を開いた。


「ひな……来てたんだ……

悪ぃ、俺、寝ちゃったみたいだな?」


ウーンと伸びをして大きな欠伸をする翔吾を見ながら、私は気付かれてなかったんだとホッとする。


「う……うん

あのね?ケーキ買ってきたよ?」


「ケーキ?珍しいな

ひなが何か買ってくるなんて」


やっぱり翔吾は自分の誕生日を忘れてるみたいだ。


「翔吾!二十歳の誕生日おめでとう!」


サプライズになったことが嬉しくて、少しテンション高めに言ってみる。


翔吾は驚いたような顔で私を見たあと、くしゃりと表情を崩した。


「そっか……忘れてた

今日14日だっけ?

だから会いたいって言ってきたのか……

フッ……ありがとな、ひな」


照れたようにそう言われて、私はまた嬉しくなる。


急いで鞄からプレゼントを取り出すと、翔吾に近づいていく。


目の前まで来ると、座ってる翔吾の目線に合わせてしゃがみこんだ。

< 261 / 289 >

この作品をシェア

pagetop