夢の欠片
「あのね?今まで翔吾にはたくさんお世話になったし、お礼の意味を込めてプレゼントを渡したくて

気に入ってくれるといんだけど……はいこれ……ヒャッ」


急に抱き締められてまた変な声が出た。


何が起こったのかわからなくて、翔吾の胸に納まったままどうしていいかわからないでいる。


心臓の音がバクバク聞こえて、翔吾に聞こえるんじゃないかと心配になるほどだった。


「あの……翔吾……?」


いつまでも抱き締めたまま離してくれない翔吾を、そっと呼んでみる。


するとふいに体が引き離されて、代わりに翔吾の顔がゆっくりと近づいてきた。


――えっ?えっ?なにこれ?


そう思ったと同時に、唇が塞がれる。


さっき私がした可愛いキスなんかじゃなくて、大人の深い深いキス……


初めての体験にどう息継ぎしていいのかわからなくて、頭の中はパニックになった。


だんだん意識が遠くなってくる。


ぼんやりとした視界の中に、慌てて唇を離した翔吾の姿が映る。


「ごめん!ひな?大丈夫か?」


朦朧とした意識の中で翔吾の声を聞いていた。


「やべっ……やり過ぎた……

ひな!しっかりしろ!」


そう聞こえたのを最後に、私は衝撃と息苦しさで残りの意識を手放した。


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