夢の欠片
「オギャア……オギャア……」
「よしよし、どしたの?
お腹空いたかな?それともオムツかなぁ?」
ベビーベッドから抱き上げると赤ちゃんは天使のように微笑む。
この子を抱いていると、それだけで幸せを感じた。
翔吾にプロポーズされたのは、私が高校を卒業してすぐの夏だった。
母は二十歳まで待ったら?と言ったけど、もうその時には私のお腹に新しい命が宿っていた。
「娘さんを下さい」
すごく緊張しながら、そう言ってくれた翔吾の顔が忘れられない。
母はしばらく難しい顔で黙っていたけれど、次に口を開いた時には笑顔になっていた。
「翔吾くん……
我が儘な娘ですけど、よろしくお願いしますね?」
母がそんな風に言ってくれるなんて思いもしなくて、私は不覚にも泣いてしまった。
たぶん妊娠のせいで涙もろくなっていたのかもしれない。
翔吾は私の背中を擦りながら、嬉しそうに笑って言った。
「任せてください!
必ず幸せにしますから
良かったなぁ?ひな?」