夢の欠片
「ふぇ……ふぇ~ん……」


「ん?どしたの?

お腹空いた?

ちょっと待ってね?」


抱き上げて機嫌が良くなったと思ったら、また泣き出しそうになった我が子に、私は自分の乳首をくわえさせた。


やっぱりお腹が空いていたみたい、良く飲んでる……


勢いよく母乳を飲む姿が愛しく感じられて、私は今、とても幸せだった。


母のおかげで結婚式が出来たことも……


たくさんの人に祝福してもらえたことも……


自分が幸せであることを証明しているかのような大切な思い出だ。


結婚式をするに当たって、私は母にあることをお願いした。


それは招待客のリストに、中田の父や健を入れてほしいということだった。


あの夏の日に二人の父に会いに行ったことを、このタイミングで母に全て話したのだ。


中田の父が再婚したことも……


健が復縁して子供二人に恵まれていることも……


そして二人が母のことをとても心配していたことも……


母は黙ってじっと話を聞いていたけれど、時々小さく息を吐きながら、それぞれの父に思いを馳せてるようだった。


全てを話し終わった時、母がゆっくり口を開いた。



< 273 / 289 >

この作品をシェア

pagetop