夢の欠片
「わかったわ……

あなたの結婚式なんだから、自分が招待したい人を呼べばいいんだから

お母さんのことは気にしないで?

むしろあなたが二人を訪ねた時に、優しく迎えてくれたことを、私は母親として感謝しなきゃいけないもの

あなたがあの夏の終わりに家に帰ってきた時……

以前と少し変わったと思ったのは、お父さん達のせいだったのね?

それぞれ幸せになってくれてるなら良かったわ……

ほんとに良かった……」


少し涙ぐんでそう言った母は、本心でそう思っていることがわかった。


自分から離れていった男達が、それぞれ家庭を築いて幸せに暮らしてることを、私は母が少なからず妬ましいと思うんじゃないかと思っていた。


だから母がそんな風に父達のことを思っていることが、少し意外だった。


「お母さん、ありがとう……

それでね?出来ればそれぞれの奥さんや子供達も呼びたいんだけど……

いいかな……?」


母にとって、それを聞くのと、目で見るのとでは感じ方も違うとは思ったけれど、私はあの夏の日に父達と同じように受け入れてくれた愛未さんやさとみさん達にも、自分の晴れ姿を見てほしかった。


あの時、二人に感じた憧れや幸せそうな笑顔にもう一度会いたい……


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