夢の欠片
最悪だ……。


すぐにこの場から逃げ出したい気持ちでいっぱいになる。


でもそんな願いは叶うことなく、補導員達に見張られながら、母を待つことしか出来なかった。


しばらくすると、見慣れた顔が遠くから走ってくるのが見える。


ようやくここまで辿り着くと、補導員の人達に深々と頭を下げて謝り始めた。


それから私の方に向き直ると、思いきり手を振り上げて平手打ちをする。


バシッ!!


たぶん手形がついたんじゃないかなと思うほどの勢いで殴られた私は、ショックで口もきけないでいた。


そんな私を泣きそうな顔で見つめながら、今度は急に私を抱き締めて耳元で囁く。


「心配したんだから……」


この時、私はそう言った母の言葉を素直に受け入れることが出来なかった。


母の気持ちが理解できるようになるまで、まだあと何年もかかることになる。


私は涙を流して心配してくれている母を、今後もまだしばらくの間、泣かせることになるのだ。

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