夢の欠片
額から汗が滴り落ちる。
私はそれを手の甲で拭いながら、じめじめする外気にうんざりしていた。
ベタつく肌が制服を湿らせて、なんとも気持ちが悪い。
学校からの帰り道――
珍しく最後の授業まで出席して、ようやく解放されたところだ。
あれから伊丹は昼間は仕事でいないけれど、母は仕事を辞めて家にいるようになった。
母と家で顔を付き合わせているくらいなら、まだ学校に行った方がましだと思い、最近は仕方なく学校に行ってる。
授業を受けるためには、こないだ校長に言われた通り、髪の毛を黒くして、すっぴんで行かなければならない。
校長や担任に屈したようで悔しかったが、それでも母といる方が私にとっては苦痛だった。
私が普通の中学生のふりをして登校したことで、担任や他の先生も思いの外、喜んでくれた。
別にただ単に家にいたくなかっただけなんだけど……と思いながら、それでも笑顔で迎えてくれる先生達に少しだけ戸惑いを感じる。
まだ私に期待して、受け入れてくれる人がいたんだってことに驚いた。