夢の欠片
私がちゃんと答えたのがよっぽど嬉しかったのか、母は分かりやすいくらいにパァッと顔を明るくさせて、意気揚々と出掛けていった。


そんな母を見て、ほんの少しだけ、心がほっこりした気がした。


母が出掛けたのを確認してから、ベタベタする制服をバサッと脱ぎ捨てる。


そして誰もないのをいいことに、下着姿で浴室へと向かった。


脱衣所で裸になると、浴室に入ってシャワーを浴びる。


汗まみれで気持ちが悪かった体がお湯で流されて、一瞬のうちに爽快感が広がった。


さっぱりして浴室を出ると、置いてあったバスタオルで体を包み込むように拭いていく。


用意していた新しい下着を身に付け、部屋に戻ろうと脱衣所を出た瞬間……


「――っ!」


声にならない声をあげて、思わず自分の体を抱き締めた。


脱衣所の前に立っていたのは、ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべている伊丹だった。


――なん……で?


何か言いたいのに、あまりのショックで何も言葉が出てこない。


お母さんだけじゃなかったんだ。


いつもこの時間にはいなかったから油断した。


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