夢の欠片
いつもならもっと強気でいられるはずなのに、今回ばかりはショックを隠せなかった。


まだ誰にも見せたことのない自分の体を、あの男に全部見られていたらと思うと、身震いがした。


母に似て胸だけは大きい自分の体を抱き締めながら、こんなことなら胸なんか小さければ良かったと思う。


子供だと認識すれば、あいつだって変な気は起こさないかもしれないのに……


にやついたいやらしい視線が脳裏に浮かぶ。


下しか身に付けていなかった私を、あいつは不躾なほど眺めてた。


咄嗟に胸を隠したけれど、もっと前から覗いていたんだとしたら、無駄な抵抗だ。


ふと見ると枕が濡れていることに気づいた。


私……怖くて泣いてた……?


それを認めてしまうと、自分がいかに怖い目に合ったのかを再確認してしまう。


やっぱり……


やっぱり、家を出よう。


このままじゃ、いつ間違いが起きてしまうかもわからない。


お母さんが選べないなら、私は自分の身を守るために、この家から出ていくことを選ぼう。


そう強く決心して、私はすぐに家を出る計画を立て始めた。



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