夢の欠片



夏休みを前にして、私は家を出る計画を着々と進めていた。


前に飛び出した時は、何も考えずに出てしまったために、補導員に捕まって散々な目に合っている。


だから今回はきちんと計画を立てて、いつ家を出るべきかを念入りに考えた。


学校がある時期はまた捕まる可能性が高いだろうと予測して、夏休み中ならなんとかいけるんじゃないかと思っていた。


そのために、あれから伊丹の視線に耐えながら、なるべく二人きりにならないように細心の注意をはらって生活している。


お金もお年玉やお小遣いを貯めたものを用意したし、普段の生活も怪しまれないように、いい子になったふりをしてきた。


母はそんな私を、自分が家にいるようになったからだと、能天気に思っているようだけれど……


そんなわけないのに、と心の中で思いながら、バカな母を嘲笑う。


明日はいよいよ終業式だ。


一度家に帰ってから、遊びにいくふりをして出て行こうと決めていた。


コインロッカーにはもうすでに大きな荷物だけ預けている。


後は身一つで出ていけばいい。


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