夢の欠片
次の日――


終業式が終わって帰る準備をしていると、担任に声をかけられた。


校長から話があるので、私に校長室まで行ってほしいらしい。


仕方なく頷いて、校長室へと向かった。


以前、校長室を訪れた時とは違って、きちんと上履きも履いているし、髪の毛も黒くなり、顔だってすっぴんだ。


誉められることはあっても、文句を言われることはないだろうと思う。


だから今回は堂々と校長室のドアを開いて中に入った。


「失礼します

お呼びでしょうか?」


私も意外と敬語とか使えるじゃん、と少しだけ得意気になりながら奥にいた校長に視線を向ける。


その変わりように驚いたのか、校長は私の声に振り向くと、目を丸くして私を見た。


「藤森……さん?

ずいぶん変わったねぇ。
驚いたよ!

担任の先生や他の先生からも噂では聞いてたけど、こんなに変わったとは思わなかったな……」


戸惑いを隠しながら、笑顔でそう話す校長を見て、確か長谷川とかいう名前だったっけ……とぼんやり思った。


この先生は、口先だけのことは言わない正直な印象があって、嫌いじゃない。



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