夢の欠片
少しだけ心を許して、にっこり笑うと、校長はまたしても驚いたように私をまじまじと見る。


「笑った顔の方が可愛いよ?

いつもそうしてるといい……

笑顔は幸せを運んでくるからね」


そう言いながら、校長も鼻と目尻にたくさん皺を寄せて、嬉しそうに笑った。


私が更正したと思って喜んでくれてるらしい。


偽りの更正だけど、母とは違って本気で喜んでくれているのがわかる。


なんだかそれが素直に嬉しかった。


だけどその裏で、これから家出をするなんて微塵も思ってないんだろうと思うと、その笑顔も滑稽に見える。


「今日、来てもらったのはね?

君がずいぶん変わったって聞いたから、会ってみたかったのもあるんだけど……

実は他にも理由があってね」


なんだろう?


全くその理由が見当たらなくて、首を傾げながら校長を見る。


「君がクラスで浮いてるんじゃないかって、先生方が心配していてね?」


やっぱりこの人は、はっきりと物を言う人だ。


内容はともかく、校長の歯に衣着せぬ物言いに好感をもった。


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