夢の欠片
余計なことは言わずに、要点だけを聞いてくる姿勢は有難かった。


今までいろんな言い訳や感情をくっつけてくる大人ばかりだっただけに、特にそう思うのかもしれない。


「確かに浮いてるかもしれないけど……

私はそれが楽だし、逆に言えば、周りから放っておいてもらえるから、学校に来れてたんだと思います」


私ははっきりと、嘘偽りのない今の気持ちを校長にぶつけた。


こんなこと普通の先生には言えないけれど、なぜか校長ならわかってくれるんじゃないかと思う自分がいる。


校長は私の言葉をひとつひとつ理解するように頷きながら耳を傾けていた。


そして私が言い終えると、少しだけ間を置いて口を開く。


「そうだとは思っていたんだけどね?

他の先生達はそうは思っていなくてね?

大人はみんな……なぜか子供達に、友達が多くて一人じゃないことを強要したがるんだよ

たぶんそれが一番安心なんだろうな?」


校長は、大多数の大人がそう思っているだろうことを、少しだけ皮肉めいた口調で面白そうに言った。


< 56 / 289 >

この作品をシェア

pagetop