夢の欠片
校長はそんな私を見て、少しだけ微笑みながら、自分もまた窓の外に視線を移す。


そして校庭で部活動をしている生徒を見ながら、呟くように言った。


「僕もね……

中学の時、君と同じような子供だったんだ

誰にも干渉されたくなかったし、関わりたくもなかった

いじめられてたわけじゃないけど、家庭環境が複雑でね?

それを誰にも知られたくなかったし、可哀想だとも思われたくなかったんだよ

最初はなんだかんだ干渉してきた友達や先生も、だんだんこういう奴なんだって諦めて、誰も近づいてこなくなった

今の君のようにね?」


そう言うと、窓からまた視線を私に戻してニッコリ笑う。


私は油断していたせいで、校長と目が合ってしまい、慌てまた目を反らした。


「だから、今の君の気持ちは少なくとも他の大人よりわかるつもりだし、わかりたいと思ってる

明日から夏休みになって、君がどんな行動に出るのかも……私にはわかるような気がするんだ」


「――ッ!」


まさか……校長先生も家出したことがあるんだろうか?


だから私のこともわかってしまうの?


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