夢の欠片
「二つ目に約束してもらいたいのは……」


そこまで言うと勿体ぶったように言葉を切って、私の顔を見ながら子供のような笑顔でニコッと笑って言った。


「夏休みが終わって、2学期になったら、また元気に学校に登校してくること」


そう言い終わると私の頭をポンポンと撫でながら、「待ってるからね」と優しく言ってくれた。


私は今まで感じたことのない気持ちを持て余しながら、どうしていいかわからずにただ呆然と校長を見つめる。


何かが右手にポタポタと滴り落ちた。


気づくとそれは私の頬も濡らしている。


今まで悲しかったり悔しかったりして泣いたことは山ほどあった。


でも今日初めて、嬉しくても涙が出るんだということを知る。


「待ってるからね」


誰かを待つことはあっても、私を待ってくれる人なんていなかった。


それがこんなにも嬉しいなんて……


私は涙を拭いながら、二つの約束を必ず守ることを校長に誓う。


そして静かにお辞儀をすると、私は校長室を晴れやかな気持ちで後にした。


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