夢の欠片
玄関のドアをそっと閉めると、解放感でいっぱいになった。


ふぅ~と深呼吸をして空を見上げると、夏特有の雲がもくもく広がっている。


「よしっ」と小さく気合いを入れて、久しぶりに翔吾達のいる場所へと向かって足を踏み出した。


ゆっくりと地面を踏みしめて歩きながら、さっきの校長との会話を思い出す。


今日、校長と話をするまで、私はただやみくもに家を出ることだけを考えていた。


だけど、れじゃダメなんだってことが何故だかわからないけれど、私の胸にスッと入り込んでいる。


たぶん校長は私にこの夏休みの間で何かを学んでほしいと思っているはずだ。


そう考えた時に、私の中の何かが小さく動いた気がした。


今まで自分のことしか考えてなくて、他人がどうなろうが知ったこっちゃないと思ってたけど、周りのことも考えて行動しなくちゃいけないんだってことを、校長と話していて教えられた気がする。


たぶん、校長に迷惑をかけたくないって思いが一番強いのかもしれない。


私を待ってると言ってくれたあの人を、困らせたくなかったしガッカリもされたくなかった。

< 65 / 289 >

この作品をシェア

pagetop