夢の欠片
あの一言で私の家出計画は180度違ったものになったけれど、それは当初の無謀な計画よりも、私にとってとても意味があるようにも思えていた。


母が急にいなくなった私を心配して通報などしないように、きちんと置き手紙も用意してきた。


*****

お母さんへ

ごめんなさい

中学の友達と遊ぶって言うのは嘘です。

私は自分が生きてる意味を探しにちょっとの間、家を出ます。

でも、心配しないでください。

夏休みが終わったら、必ず帰ってきます。

2学期から、学校にもきちんと行きます。

だから探さないでください。

私を信じてくれるなら、夏休みが終わるまで待っていてください。

お母さんが、私の期待を裏切らないことを願っています。


ひなより
*****



もしあの手紙を読んでもなお、警察に通報なんかしたら、今度こそほんとに母を許さない。


母親が娘を思う気持ちなんか、この時の私にはこれっぽっちもわかってなかったから……


< 66 / 289 >

この作品をシェア

pagetop