夢の欠片
「翔……吾?」


なんでそんなに悲しそうなのかがわからなくて、私は思わず翔吾の名前を呼んだ。


翔吾は私の目線の高さまで少しだけ屈むと、悲しそうに笑う。


「ひな……

ここ……ひながいない間にいろいろあったんだ……

それで……今はもうお前が知ってるやつらは誰も来てない……」


翔吾は、つらそうな表情で途切れ途切れにそう言うと、目を閉じて静かに息を吐いた。


「良かったぁ……

ひなのこと……俺が見つけられて……」


ホッとしたようにそう言った翔吾は、状況を全く理解できていない私に、ようやくいつもの顔で笑いかける。


「ここは誰も知り合いいないだろうし、危ないからさ

そうだな?俺んち行くか?」


――えっ!?


ちょっ、ちょっと待って?


こ、心の準備が……


俺んちって……そんな簡単に行っちゃっていいものなの?


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