夢の欠片
翔吾が急に、私の目の前で立ち止まって、勢いで彼の背中にぶつかりそうになったのをなんとかこらえた。
なんだろう?と、翔吾の背中越しにその先を見てみる。
そこにはお世辞にも綺麗とは言えない、昭和を醸し出すような古い2階建てのアパートがそっと建っていた。
うわぁ~ボロボロだ……
思わず口に出しそうになるのをなんとか抑えて、心の中に留めた。
「ボロいだろ?ここ、俺んち」
振り返ってニヤッと笑いながら、翔吾は反応を楽しむように私を見る。
たった今思ったことを見透かされたような気がして、私はあわあわしながらそれを否定した。
「いやっ、あの……そんなことは……」
「無理すんなって!
住んでる俺がボロいって言ってんだから気にすんなよ」
私の頭をクシャクシャっと撫でながら、翔吾はヘヘッと照れたように笑った。
つられて一緒に笑ってしまうと、翔吾は「行くぞ」と私の手を引いて、自分の部屋へと案内してくれる。
階段を上がって2階の一番奥にあるのが翔吾の部屋らしい。
鍵を開けると、私の背中をそっと押して、先に中に入るよう促してくれる。
遠慮がちに一歩中に足を踏み入れると、外からは想像もつかないほど、部屋は綺麗に整頓されていた。