夢の欠片
知らない間に涙が溢れて止まらなかった。


美樹ちゃんの気持ちを考えたら、あまりにも酷すぎて、体がさらに震える。


「ひ…ど…いよ……

だって、美樹ちゃん……
あんなに……

初めては……好きな人にあげるんだって……

言ってたのにぃぃぃ!」


誰にぶつけたらいいのかわからないこの怒りを、私はただただ叫びながら……


悔しくて……悔しくて……翔吾の胸を拳で思いっきり叩いた。


「何で!?何でなの?

何で……美樹ちゃんが……うっ……」


そこまで言うと、もう声にならなかった。


そのまま翔吾の胸に崩れ落ちるように顔を埋める。


しゃくりあげながら嗚咽する私を翔吾は優しく髪を撫でながら、ずっと受け止めてくれていた。


たぶん……


私だけじゃない。


翔吾や舞さん達も同じ思いだったんだろう。


悔しかったし、辛かったに違いないんだ。




美樹ちゃんはわりと裕福な家庭のお嬢様だった。


でも優秀なお兄さんがいたおかげで、いつも劣等感でいっぱいだったらしい。


中学受験に失敗したのをきっかけに、両親が一斉にお兄さんのことにしか目がいかなくなったんだって、いつだったか美樹ちゃんが話してくれた。

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