夢の欠片
お父さんもお母さんもお兄さんもいるのに、いつも美樹ちゃんはひとりぼっちなんだって、悲しそうに笑ってたっけ。


だから彼女もまた、あそこに自分の居場所を求めて来ていたのに……


一つしか歳が違わないのもあって、親友のように仲良くしてくれた。


私がいない間に、何があったんだろう?


美樹ちゃんがもういないなんて……信じられないよ……


後から後から流れ出る涙を、私は止めることが出来なかった。


翔吾は私が泣き止むのを諦めたのか、そのままの姿勢でまたゆっくりと語り始める。


「俺らの縄張りに捨てられてたのを舞達が見つけて……

すぐに警察に通報した。

あいつらはすぐ捕まったんだけど……

美樹は……

入院してた病院の屋上から飛び降りて、助からなかったんだ」


翔吾もまた泣いていた。


私を抱き締めながら、耳元で翔吾の鼻を啜る音が聞こえてくる。


助けられなかった悲しみと悔しさが、翔吾から伝わってきた。


どのくらいそうしていただろう?


私達はお互いをどちらが慰めてるのかわからないくらいに、きつく抱き締めていた。


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