夢の欠片
「だからひな

お前ももうあそこには行くんじゃないぞ?

たぶん、舞も来ないと思うから

俺もお前を見つけられたから、もう行く必要ないしな?」


抱いていた私の体をそっと引き離して顔を覗きこむと、翔吾は子供に言い聞かせるみたいにそう言った。


あの場所にはもう行くなと言われて、私は現実に引き戻される。


当初の目的を思い出して、思いきって翔吾に聞いてみることにした。


「あの……ね?

私……家出してきたんだ

舞さんの家に泊めてもらおうと思ってたんだけど、無理っぽいし……

だから……

翔吾のうちにしばらく置いてもらえないかな?

何でもするから……

お願いします!」


畳に額がくっつくくらいお辞儀をしてお願いすると、翔吾が返事をしてくれるのを待った。


「家出って!おまっ……何やってんだよ!?」


グイッと肩を掴まれて、無理矢理体を起こされると、怒ったように睨む翔吾の顔がそこにはあった。


きっと私が向こう側で居場所を見つけて、すっかり馴染んでいると思ってたんだろう。


驚きと焦りと怒りが混ざったような顔で私を見つめる。


< 81 / 289 >

この作品をシェア

pagetop