夢の欠片
「泊まるとなったら話は別だろ?

夜、隣にこんなに可愛い女の子が寝てたら、いくら理性的な俺でも、我慢できるとは限らない……」


そう言って、翔吾はゆっくりと顔を近づけてくる。


――キスされる!


そう思って、ギュッと目を瞑った瞬間……


おでこに激しい痛みを感じた。


――えっ!?


わけがわからなくて慌てて目を開けると、翔吾がニカッと笑いながら、指先でデコピンの形を作っている。


「もう、ひど~い!」


まだ痛みの残るおでこを擦りながらそう言うと、翔吾は急に真面目な顔をして言った。


「わかった!

ここに置いてやる」


えっ?うそ……


「ほんとに……?」


信じられなくて恐る恐る尋ねると、翔吾は観念したように私を見た。


「どうせ俺がダメだって言ったって、うちに戻る気なんかないんだろ?

また変にウロウロされて心配するくらいなら、俺んちにいてもらった方が安心だしな?」


ニヤッと笑った翔吾に、私は嬉しくて思わず抱きついた。


美樹ちゃん……


私、頑張って自分の生きる意味を探してみる。


だから……天国で見守っててね?


いろんな思いを胸に、私は明日から美樹ちゃんの分までしっかり生きようと覚悟を決めた。


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