夢の欠片
「そっか……」


聞いちゃ悪かったのかなと気遣うように、翔吾はそっと相づちを打つ。


「結局……最後はお金を持ち出して逃げちゃった

あはっ、つくづく男運悪いよねぇ?うちの母親」


ほんとバカだ……


変な男にばっかり引っ掛かって……


寂しさ埋めるために誰かにすがって……頼って……


挙げ句の果てに、最後はいつも裏切られて傷付いてる。


今だって……


今度はあの男の経済力に頼ろうとしてるのが見え見えだ。


その引き換えに母は……自分の体を伊丹に委ねてる。


そう思うと途端に気持ちが悪くなった。


毎晩のように聞こえてくる押し殺したような声。


母は娘がいる同じ家の中でそういうことをすることに抵抗はないんだろうか?


もしそうだとしたら最悪だ。


私のことを考えて伊丹と結婚するつもりだって言ってたけど……


とてもそうだとは思えない。


伊丹の娘への視線が男の目になっていることを母は知ってるんだろうか?


母だけじゃなく、もしかしたら娘の体さえも狙っているかもしれないということを……


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