夢の欠片



「翔吾! いってらっしゃい!」


「おう、お前も気をつけて行くんだぞ?」


「はあ~い!」


なんだか新婚さんみたいな朝の光景に、私はくすぐったいような気持ちになりながら翔吾を送り出す。


翔吾は実家を出てから、自分一人の力で働きながら生活していた。


まだ若干17歳だというのに、自分とは違ってしっかり生活していることに、すごいなぁと尊敬している。


前に翔吾が言っていた、キツイ·汚い·休みがないの仕事は、自分のことでもあったみたいだ。


でもそう言いながらも、今の仕事にはやりがいを感じているらしい。


現場仕事で体力はいるけれど、物が出来ていく過程が面白いんだと翔吾は言った。


親方のこともとても尊敬している。


そしていずれは自分も独立したいと考えているようだった。


私も早くやりたいこと見つけなきゃ……


まだ中学生だけど、翔吾の言う通りきちんと卒業して、出来れば高校にも行って、その先は自立したいと今は考えるようになっていた。


それが自立するための一番の近道なんだとわかったから……


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