夢の欠片
「ひな……

大きくなったなぁ?

一瞬、わからなかったよ

でもやっぱり面影があるもんだな?

お父さんに会いに来てくれたのか?」


私は涙で言葉にならない声で「うん…」と答える。


「そうか

まさかひなから会いに来てくれるとは夢にも思わなかったよ

ありがとう……」


父は泣きじゃくる私の肩を抱いてそう言いながら、自分の部屋へと促してくれた。


懐かしい部屋の中に入ると、少しだけ以前とは違っていることに気づく。


「お父さん……

もしかして再婚したの?」


父にソファーを勧められて、そこにポスンと座りながら、私はそう聞いた。


父は冷蔵庫からジュースを取り出して私に手渡しながら答える。


「あぁ……わかっちゃったか

うん、そうなんだよ

実は去年再婚したんだ」


少し恥ずかしそうにそう言った父が、今は幸せなんだと物語っていた。


「そっか……おめでとう……

でも私、ここにいたらまずいんじゃないの?」


< 99 / 289 >

この作品をシェア

pagetop