もう、ひとりにしない。
2nd 対立と無自覚の日々
入学してから、半年が過ぎた。
3月、日本ならもう春の訪れを見聞きするところなのだろう。
が、しかし。
慣れない土地の季節の移り変わりに敏感に反応することなど到底できず、3月なのにまだしんしんと雪が降る日もあるワシントンでは春の訪れなどしばらくお預けのような気がした。
あたしのクラスは、というと。
クラス全体が非常にクオリティーが高くて気が抜けない。
半年経ったのにあたしにはまだ、蚊帳の外にいるような感覚が付いて回り、焦りから実験中にミスを犯すことが多くなった。
それでも、他のチームメイトがそれをカバーしてくれて、あたしたちのチームは非常に効率よく実験をこなすことができるチームとなりつつあった。
でも、ここへ来るまで、なんでもそつなくこなすことのできていたあたしにとって、今のあたしの現状は、信じられないくらい、歯がゆくて、情けなくて、そして悔しかった。
クラスもだいぶみな打ち解けだして、サマンサはヒューと付き合うようになった。
ついこの間なんてドナが同じグループの男の子とデートしているところを見つかって結構話題になっていた。
アジアン・ビューティーな彼女は他の学年でも結構注目されていたので、なおさら驚きの対象だったようだ。
ジェインやグレイスにもボーイフレンドはしっかりいて残るはあたしのみ、となった。
正直、男を捜している余裕もないくらい、あたしは焦っていた。
勉強と私生活の両立と充実、なんて、この時のあたしには絵に描いた餅のようだった。