もう、ひとりにしない。
そんなあたしを見て、ふうっとため息をこぼし、
「そう言うんじゃ、仕方がないね。じゃあさ、こうしようか。今度のダンスパーティーまでお互い友達として付き合ってみないか?ダンスパーティーに一緒に出てみて、それからもう一度、答えを聞くから。それでどう?」
まるで、駄々をこねた女の子に仕方がないといった感じで提案してくる。
なんだか契約条件を決めているような感じだった。
こういうのも、この人にはありなんだろうか。
こんなとき、普通の女の子ならみんな飛び上がって喜ぶのだろうか。
女の子の注目の的である彼からのアプローチを喜ばない人はいないんだろう。
でも、あたしは、そんな彼に何も感じたりしなくて。
目の前で心配そうな瞳を揺らしている彼に何となく悪いかな、そう思ってしまって、仕方なく、
「じゃあ、お友達としてスタートしましょう?」
そう言うと、彼は満面の笑みを浮かべて喜んでいた。
けれどすぐに彼はハッとして、
「うわ!もうすっかり暗くなっているよ?ホステルまで送るよ。」
と再び手を掴まれ急いで校舎から揃って出た。
その、握り締められた彼の手からは、さっき感じた悪寒を感じることはなくて。
温かさだけを、ずっと感じていた。
二人が出て行って間もなく、物陰から一人の男が現れた。
「あいつ、たしか、、、。」
すっかり暗くなったその場所からまもなく男は消えた。