もう、ひとりにしない。


「ねえ、どうして?」

そう言って、彼のほうへ向き直る。

彼はあたしの顔を見てからすっと離れ、窓に寄りかかった。

「君を傷つけることが無性に怖くなったんだ。俺の前を走っていた君が撃たれた時、気が狂いそうだった。、、、、あんなに怖い思いをしたのは生まれて始めてだった。そして、君を側へ置いておけなくなった。」

そう言って、しばらく窓の外を見ていた。

「あの時は、本当に、本当に運良く助かった。でも、次はどうだかわからない。当たり前だろ?あそこは戦場、カンボジアなんだ。何が起こったっておかしいところじゃないだろ?、、、、だから、怖くなったんだ、君をあの場所へ置いておくことが。だから、君を病院へ運び、手術をして、そして、、、戻ったんだ。」

言い終わった後も、彼は窓から見える景色をみつめたままだ。

あたしはその彼の横顔を見詰めるだけだ。
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