昔の風
「せっかくの誕生日にごめん」

「いいのよ」

 そう優しく笑う彼女を見て、大事なことを思い出した。

「俺のコートは?」

「あるわよ。それより先にお水飲んで」

 渡された水を一気に飲み、もう一度コートはどこかと聞いた。

「ちゃんとあるわよ」

「どこに?」

 そう聞くと彼女は立ち上がり、コートを持ってきた。

「何か大事な物でも入ってるの?」

「ポケットの中を見てみて」

「ポケット?」

 俺が頷くと彼女が不思議そうにポケットに手を入れた。その中に入っている物を彼女の手が掴んだようだ。その証拠に表情が驚きに変わった。

 彼女がポケットの中から箱を取り出し、蓋を開けた。そこには小さな小さな輝きがある。
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